若いモンへの車内エチケットソング」   

                             

作詞/山田博士

                             

    一.  電車の中では遠慮など そもそもしてはいけない

        お前の部屋にいるように 傍若無人にふるまうがいい

        空いた席を見つけたら 勢いよくデンと尻を置け

        隣の人が飛び跳ねても 気おくれなんかしてはいけない

        お年寄りが不運にも 近づく気配を見せたなら

        さりげなく首をうなだれて 片目だけでも狸寝入りしろ

        お前が先に座った場所は 何があっても動いちゃいけない

        たとえ電車が脱線しても たとえ電車が本線をはずれても

           さあ思い出そう

           お前は学校で何一つ 役立つことは学ばなかったけど

           近所の砂場で幼いとき おもちゃを貸してあげて喜ばれたじゃないか

           さあ思い出そう

           お前は学校で何一つ 心のぬくもり学ばなかったけど

           拾った子犬抱きしめて いっしょに震えてやってたじゃないか

 

    二.  電車の中では誰一人 いると思ってはいけない

        まわりはすべてまぼろし お前の世界に浸ればいい

        満員電車も気にしない リュック背負って押し入れ

        みんなが顔を歪めても ひるんじゃいけない負けてはいけない

        座れば手鏡取り出して マスカラそれにアイシャドウ

        まなこを大きく見開いて 化粧はとくに念入りにしろ

        お前が先に座った場所は 何があっても動いちゃいけない

        たとえ電車が脱線しても たとえ電車が本線をはずれても

           さあ思い出そう

           お前は学校で何一つ 役立つことは学ばなかったけど

           近所の砂場で幼いとき 1本の傘で雨宿りしたじゃないか

           さあ思い出そう

           お前は学校で何一つ 他人の痛み学ばなかったけど

           仲良しケンちゃんとケンカして 真っ赤な血を見て泣いたじゃないか

 

         (子守歌のメロディーにのってセリフが入る)

     「おじさんはなあ、寂しいんだよ。そりゃあ昔も、悪いと知っててルール違反をしてい

     るワルもいたわい、少しはな。でもいまは、ちょっと違うんだなあ。なんと言ったら

     いいのかなあ。若い連中は自分の世界に閉じこもってしまって周りを見ていないんだ

     よねぇ。目を開いていても何も見ていない。それが不気味なんだよね。人が困ってい

     ても気がつかないのは当たり前さ。だって、社会を見ていないんだもの。これじゃ昔

     のように、悪玉が俺についてこいなんて言ったら、怖いよねえ。笛を吹く男について

     いってしまう動物たちのように、みんなついていってしまうんじゃないの。いや冗談

     冗談、ハハハ・・・」

 

ひとこと

最近の車内事情はちょっと異常です。戦後50年が経って、私たちの為してきた経済活動の結果がこんな形で現れようとはねえ。多くの客がすぐ前にいても、彼らの瞳には何も映っていないのです。なるほど、そうでなければこの歌のような“車内事情”が起こるはずもありませんよね。自分だけの世界に浸る彼らは、たぶん沈没する船に乗っていることさえ気がつかないのでしょう。