五木村水没エレジー

                             

作詞/山田博士

                             

 

      一.  坊や許してくれ お前の思い出を

          水の中に埋(う)めた 大人たちのことを

          子守の里はいま 湖(みずうみ)に溺(おぼ)れて 

          村人は去りゆき 白いダムが一つ

             ああ 人は故郷(ふるさと)から 人生が始まる

             なのに村を消した この国こそ哀(あわ)れ

          水辺(みずべ)にひざまづき そっとすくう水に

          子守唄歌う 母の面影(おもかげ)映る

 

      二.  坊やごらんいいか 俺の投げる小石

          水面(みなも)崩すあたり そこは学校だった

          机チョーク黒板 夕焼けの教室

          いまは魚の群れ 窓をくぐるだろう

             ああ 人は故郷から 人生が始まる

             なのに坊やお前 どこに戻ればいい

          水辺のさざ波は 底に眠る人の

          こらえて忍び泣く 肩の揺れのためか

 

          (せりふ)「五木の村は いまはもうない

               子守の里は いまはもうない」

 

      

ひとこと

熊本県五木村のダム工事が、いよいよ99年度中の本体工事着工に向け、新たな段階に入りました。33年前に立案され、環境影響の調査さえせずに始まった川辺川のダム計画。何が何でも村を消すという建設省。でも、長い年月をダム計画に振り回されてきた村人たちの心はいかんばかりでしょう。世界は、ダムを作らない方向に動いているというのに。