I’m a Red Signal Man(2)

−−びっくら東海村放射能臨界事故−−

     

作詞/山田博士

                             

 

    ※(電話のプッシュ音)ピピパ。ルルルルル………。「はい、119番です」「こちら住友金

    属鉱山ですが、建物内で、人が倒れました。救急車をお願いします」「どうしました

    か」「詳しくは分かりませんが、て・ん・か・んで、倒れたと思われます」「意識はあり

    ますか」「ありません」「では横向きに寝かせて、嘔吐(おうと)に気をつけてくだ……」(ピーポ、

    ピーポ、ピーポの音が重なり、途中で少し大きくなって、まただんだん小さくなってゆく)

    (風の音)I'm a Red Signal Man I'm a Red Signal Man

 

         「こ、こんなこっと、お、おら、しんじねえぞ。し、しんじねえぞお」

 

          (ラップ調)

          お前は今日もうつろな目をして コンビニなんかで時間を溶かす

          灰色だらけの食べものだけは 食うなと言っても知らん顔

          自分のいのちが傷つくことを 知らなきゃ他人のいのちのことも

          気がつくはずがないではないか お前のお尻に火がついた

          I'm a Red Signal Man I'm a Red Signal Man

 

      「こちらJCOです。東海村役場でしょうか。うちの職員は全員退避しました。施設から

      500メートル以内の住民を至急、退避させてください」(サイレンの音が鳴り響く)

 

          青い光が体に刺さり 作業の男が突然うめく

          誰もが「まさか」と思ったことも 起これば「やはり」と誰もが思う        

          国も県も村も会社も 互いに指で指(さ)し合うばかり

          初めて起こった臨界事故も お前の瞳にゃ映らない

          I'm a Red Signal Man I'm a Red Signal Man

 

      「1999年9月30日午前10時43分。日本で初めて起こった臨界事故。作業員が運

      び込まれた事故直後の病院の話では、『……リンパ球の減少度から、重症の2名は10シ

      ーベルトを越す可能性があり、致死率はおそらく……』」(ピーポ、ピーポ、ピーポの音)    

 

          悲しいじゃないか悲しいじゃないか 悲しいじゃないか悲しいじゃないか

          人のいのちをバケツですくう そんな姿が悲しいじゃないか

          こんな低いレベルの事故が 高いレベルの施設で起こる

          臨界・限界・妖怪・破壊 お前も声をあげんかい

          I'm a Red Signal Man I'm a Red Signal Man

 

    (アナウンサーの声)「お昼のニュースです。2001年1月から、ドイツ政府は、使用

    済み核燃料の再処理を禁止することになりました。また、新規の原発建設は一切認めない

    との方針を打ち出したもようです。日本では、原発によるコスト高の問題は、東京電力だ

    けでも負債額が現在約10兆円にものぼっており、しかも高レベル放射性廃棄物のゆくえ

    をどうするかということも含めてまったく見通しが立っておらず……」(ピーポ、ピーポ、

    ピーポの音が重なり、途中で少し大きくなって、まただんだん小さくなってゆく)   

       (風の音)I'm a Red Signal Man I'm a Red Signal Man 臨界・限界・

          妖怪・破壊、お前も声をあげんかい。臨界・限界・妖怪・破壊、お前も声を

          あげんかい

                                                        

       

ひとこと

驚かないで下さい。地中深く埋められた高レベル放射性廃棄物は、120年後になっても水を一瞬にして蒸発させる熱さです。岩塩を溶かし、地下水と接触することになると、プルトニウムの臨界反応が地下で生まれ、原爆が勝手に生まれます。すべてを破壊し尽く したあとの日本には、何が残っているというのでしょうか。今回の事故は痛烈でした。