灰、さようなら

−−I’m a Red Signal Man(PART)−−

                             

作詞/山田博士

                             

          (駅のプラットホーム。ザワザワとした音が聞こえてくる。そこへアナウンス)「まも

          なく電車が入ってきます。いのちを落としたいかたは、ホームの端(はし)をしっかりお歩き下

          さい。おタバコをお吸いのかたもいつものように、ホームの端を確実にお歩き下さい。

          まもなく電車が入ってきます……」電車のすさまじい急ブレーキの音。キキ〜ッ。

            (風の音)I'm a Red Signal Man I'm a Red Signal Man

 

               (ラップ調)

              お前は今日も少女のように あどけなさを残して煙をふかす

              そうすることが翔(と)んでる女と お前は信じてライトをふかす

              くわえた炎が点滅してるぞ 一時停止の合図じゃないか

              お前に少し話をしたい 親でも言えない話をしたい

               I'm a Red Signal Man I'm a Red Signal Man

 

          「え〜、コホン、20世紀初めのころの話じゃ。アメリカ国内では、肺ガン死亡者は、

          年間わずか4〜5人しかおらんかった。タバコ会社なんていうものはそのころ影も形も

          なかったからじゃ。ところがじゃ、驚いてはいかんぞ。タバコ会社ができて以降の19

          50年代、死亡者はなんと年間1万8千人にもなってしもうた! 日本では現在、肺ガ

          ンの死亡者が胃ガンを追い抜いたと聞いておる。肺ガンってお前知ってるかな。水に溺

          れたら息をするのが苦しいじゃろう。一生がそうなるんじゃぞ。治ることはない。ふふ

          ふ……」

 

              人は誰でも自分にはぐれ 何かにすがって生きていくものだ

              けれどもお前の優しさだけは 煙にすがって消してはいけない        

              大人は誰も教えてくれない 親も教師も教えてくれない

              お前の心にきっぱり刻(きざ)め 「灰さよなら」をきっぱり刻め

               I'm a Red Signal Man I'm a Red Signal Man

 

           「え〜、コホン、それから2000年までに、地球上で10億人もの人たちが、年間5  

          兆本ものタバコを吸うことになってしもうた。年間400万人のいのちが、タバコだけの

          ために消えていたんじゃよ。つまり毎年毎年、横浜や大阪ぐらいの大都会が、1つずつ

          地球上から消えていたということじゃ。WHOの神戸国際会議によれば、タバコ会社は、

          女性と少女に特に喫煙させるキャンペーンを積極的に行っているということじゃった」                               

 

              煙いじゃないか煙いじゃないか 煙いじゃないか煙いじゃないか

              アメリカなどからくすぶってくる 病(やま)いの臭いが煙いじゃないか

              肺ガン くちガン のどガン 食道ガン 胃ガンに 膵ガン 肝ガン 子宮ガン

              ガンガンガンガン言わなくっても お前がきれいでいてほしい

               I'm a Red Signal Man I'm a Red Signal Man

 

          「え〜、コホン、日本のお前たちはのんきだのう。アメリカなどじゃ国民たちが大騒動

          しとる。そのため、大手のフィリップ・モリス社自身が、つい先ほど、「タバコを吸う

          ことが肺ガンその他のいのちにかかわる病いの原因である」ことを、はっきりと認めた

          というんじゃ。日本の女たちは、子どもも生めず、そのうちにきっと後悔するじゃろう

          よ。いのちにかかわることだからのう。ははは、灰、さようなら、灰、さようなら」

          (電車のすさまじい急ブレーキの音)

                                                                               

 

ひとこと

高校生たちが、コンビニの前で堂々と喫煙をしています。大人たちも、もう当たり前の光景のため、誰も驚きもしません。じつは、明治時代にも子どもたちに喫煙が広がっていたのです。日本での国産紙巻きタバコは、1869年(明治2年)に上田安五郎が作ったものが最初のようですが、 喫煙の風習は、当時の子どもの間にも広がってしまったんですね。小学生までが喫煙をしながら学校に通っていたようです。でも、肺を壊して、徴兵に取れなくなったら大変だということで、未 成年者喫煙禁止法を制定したようです。正直ですね。いまの若者たちの肺の中はどうなって……。