シローよ

                             

   作詞/山田博士

                             

 むかし、むかし、じゃなくて、いまの、いまのある日のことじゃ。東京のある町に、国立病院があるんだと。この建物の中で、ある人が偶然に一匹の白い犬を保護したんだそうじゃ。この犬の名はシローと呼ばれておった。シローは息もたえだえだったということだわ。かわいそうにのう、全身に皮膚病が広がって右の耳はそげ落ちていたんだという。腰のあたりには、深く手術された跡があり、ただタコ糸で縫われていただけだったということじゃ。そう、シローは動物実験された犬だったんだのう。

 

         一  愛にはぐれて 吠えてるんだね

            空にはちぎれた お月さま

            切られた日々の むなしさに

            心荒れて いるんだね

            あの日突然 シローよ(シローよ)

            見知らぬ土地に 捨てられて(捨てられて)

            なにを信じ るのか(るのか)

            お前の瞳に 歌もない

 

 手術をしたという事実だけで国から金が落ちるんじゃ。だからその後の処理まではなされなかったんだという。 人間なんて勝手なもんだ。昨日まで花よ蝶よと可愛がっていた犬を、今日は道端に捨ててしまい、そして殺されるんだからのう。こうして始末される犬が、1年だけでなんと45万匹にもなるということじゃ。

 

         二  愛をこぼして 泣いてるんだね

            いのちが震えて いるんだね

            昨日の暮らし 壊されて

            もはや戻る 場所もない

            あの日突然 シローよ(シローよ)

            心と体 刻まれて(刻まれて)

            しゃべることも できず(できず)

            お前の瞳に 虹もない

 

 でも、いっぺんに殺されるのはまだいいのかもしれん。シローのように、製薬会社、化粧品会社、病院などへ動物実験されるために回される犬がじつは2万匹もいるんじゃ。手術の後、麻酔が切れても激痛を止める処理さえしてもらえずに、もがき苦しみながら殺されていく運命の犬じゃ。ん? お前たちはそれでも動物を、今日も捨てる、かな? かな? かな?

 

         三  愛はいつでも 口先ばかり

            なんとも愚かな 人ばかり

            いっしょに駆けた 広場には

            音も声も 影もない

            あの日突然 シローよ(シローよ)

            明日の夢を 閉ざされて(閉ざされて)

            何を信じ るのか(るのか)

            お前の瞳に 歌もない

 

 人間なんて勝手なもんだ。人間なんて勝手なもんだ。人間なんて・・・・・・人間なんて・・・・・・。

 

 

ひとこと



 

捨てられた犬や猫の運命、みなさん知っていますか。ペットショップでいとも簡単に動物を買い、ただ飽きたというだけでいとも簡単に彼らを捨ててしまう。飼い主をあれだけ慕っていた彼らの瞳を私は直視することができません。この日本だけで、1年に殺される犬が45万匹。そのうち2万匹が動物実験されています。動物を粗末にする社会は、たぶん人間をも粗末にする社会です。