日本農業新聞

−2004年5月9日−


 

食を外国に委ねる国への警鐘

 著者はコンビニ食を「ただ単に食品という物質だけを指すのではなく、ぼくたちの食文化そのものを指している」と指摘するだけに、現代の食に対してかなり辛口の論調となっている。
 食の安全性に始まり、コンビニ弁当、環境ホルモンなどさまざまな問題を、国内外の農産物を例に挙げる。また、若者をきれさせる原因として「黄色4号」「安息香酸塩」「亜硝酸塩」「(酸化防止剤の)BHA」「(化学調味料の)MSG」の5つの物質を挙げ、その問題点を商品や企業名とともに具体的に示している。
 国内の農産物を毎日見続けている者として、コンビニ食の一翼を国内の農産物が担っている現状から、「そこまで言わなくてもいいのではないか」とも思う。
 しかし、著者の言おうとしていることは、日本人がなくした「食の大切さ」や「食へのこだわり」とも言える。
 利便性、簡便性を求める現代の消費者。そして、それを満たし、利潤を追求する企業。大量生産を続ける近代農業へ警鐘を鳴らしたい思いも見える。
 著者はあとがきに、宮沢賢治の「農は国の基」を引用、「自分のいのちを自分で守る。人間としてのプライドを感じていたんですね。外国に食料をすっかり委ね、毎日コンビニ食をほお張るぼくたちに、その思いが一片でもあるのか自分に問い掛けたい」と自問する。
 その上で、「農業は気候に大きく左右される。その対策を地道にせず、すべて外国に依存するような政策はやはり変だと思う。(略)食べ物を粗末にし、大地を外国に売り飛ばすような国に、ぼくはいつもあ然としているんです」。コンビニ食に慣れ親しんだ現代人には耳が痛い。

《評者》山口 武(本紙農政経済部)

 『最新危ないコンビニ食』 山田 博士・著  熊谷さとし・絵
 現代書館=(TEL)03(3221)1321、A5判変型、173ページ、1575円

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