月刊「生徒指導」

−2004年7月号−


 

 特集 いま求められる「食育」

 子どもの「食」が危ない!
−ふふふ、コンビニ食、みんなで食べれば怖くない?−

日本危機管理学会会員 山田 博士

 1 ある園長からの1通の手紙 

 先日、ある私立保育園の女性園長さんからお手紙をいただいたんです。広島県に住む40代初めの方でした。

 「いやあ、確かに確かにそうでした。山田さんの本に書いてあったその物質。うちの園の子どもをまさしくキレさせていたんです。すさまじいものでした。まさかあれほどとは……。でもあれほどすぐにアレルギーを起こし、心にも影響を与えるものが食べ物に含まれているなんて、ひょっとしたら私たち、今とんでもない地点に立っているのかも……」

 その“物質”が何のことを指すかについては、後述しましょう。でも園長さん自身も、自分が妊娠していたとき、たまたま母親の病気の世話もあって、ついつい外食に頼ったり市販弁当を食べ、胎児にとって一番大切な時期をそうして過ごしてしまったといいます。

 その結果、生まれた第1子は、1歳前後でぜんそく様の気管支炎。頼みの医者からは「原因がわかりません」。途方に暮れた彼女は、私の本と出会い、毎日食べている食べ物を観察することにしたといいます。すると先ほども述べたように、「確かに確かに」、食べ物によっては、すぐにぜんそく発作を起こすようなものもあって愕然としたというんですね。

 彼女はいいます。園に通ってくる子どもたちを見ていると、朝はコンビニで買い求めたおにぎりを母から与えられ、昼は園の給食、夜はまたコンビニ弁当を口に入れられている。若い母親にとっては、「楽に、速く、手間がかからない」というのが大原則だそうです。年輩の方がこの話をお聞きになれば、たぶん腰が抜けるのは1度や2度どころじゃないでしょう。

 2 コンビニ食とは私の造語。実は……

 私が最近出した本『脱コンビニ食!』(平凡社新書)の第1章で、「日本人にいま真剣に問う。本当にコンビニ食でいいのか。日本人がこのまま滅亡していいのか。いのちを削るその実態を話そう」として、コンビニ食の5つの特徴を述べました。

 1つに無生命食、2つに無国籍食、3つに無愛情食、4つに無重量食、そして5つに無感動食。

 これらの特徴のすべてをここで述べることはもちろんできませんが、ここでいう「コンビニ食」という言葉。実は私がつくった造語なんです。数年前にやはり別の本の名前に使いましたら、マスコミなどで突然使われ始め、ポピュラーになってしまいました。

 でも私が、「コンビニ食品」ではなくわざわざ「コンビニ食」という言葉をつくった背景には、ただ単にコンビニで売られている食品という物じゃなく、その背景にある日本の食文化をこそもっと考えたい、という含みがあったのです。

 しかもコンビニ食とは、コンビニで売られている食べ物だけを指したものではありません。ファストフード、それにファミリーレストランや回転寿司など、外食で口にするすべてのもの、そして皆さんが毎日スーパーやデパートの地下、駅の地下の食料品コーナーなどで買い求める半加工食品や冷凍食品などすべてを、私は「コンビニ食」と名づけました。

 「ふふふ、私はコンビニでは食べ物を買わないから大丈夫なのよね」というのんきな方も、毎日、スーパーなどで、化学薬品にまみれた半加工食品や冷凍食品などを買っていらっしゃるのではないですか。

 それらはいつでもどこでもパッと買え、包丁など持たずにサッと食べられ、空き容器は洗わずにポィッと捨てられ、便利そのものです。これこそ、まさしくコンビニ食=便利食ではありませんか。

 そしてついでにいえば、これらこそ、皆さんや子どもたちの命を簡単に、そして便利に(?)、ポィッと捨て去ってしまう“犯人”だったんです。

 先ほど述べたコンビニ食の5つの特徴に戻りますが、そのなかでたとえば「無生命食」。私は、コンビニ食にはもはや命が宿っていない、ということを強調しました。多くの生き物たちは寸前まで命の宿っていたものを食べて人生(?)をまっとうしています。どんな小さな虫でも魚でも獣でも鳥でも、みんな新鮮な命を食べて生きています。

 たとえば青大将。そうです、あの大きなヘビです。彼らさえ、無精卵より有精卵を好んで飲み込みます。孵化すれば命が生まれる卵。命がそこに宿っています。彼らはちゃんと選んでいるんですね。でも私たち人間はどうか。何日も前に殺されて、しかも化学物質で“泥まみれ”に味つけされた物を喜々として頬張っている、不思議な動物なんですね。

 3 万国旗が突き刺さったコンビニ弁当

 コンビニ弁当のふたを開けてみます。私の目には、ご飯とおかずの上に突き刺さった何十本もの万国旗が映ります。そう、これらは「無国籍食」。皆さんが和食だと思っていらっしゃる「和食弁当」もそうです。たとえば煮っ転がし里イモはフィリピンから。お浸しのホウレンソウは中国から。天ぷらのサツマイモはタイから。そのほか、ニンニクはメキシコ、アスパラはアメリカ……。

 これらの「ニセモノ和食」を和食と信じ、「そうなのよね、日本人は和食でなくっちゃ」と言いながらデパートの地下や駅の地下、スーパーで買い求めている母親たち。生き物には、生まれ育ったところで穫れたものを食べるという、大原則があるのです。ほかの生き物をごらんなさい。飛行機や船で外国に買い出しに行きますか。

 そして、朝は欠食、夜は孤食。これは「無愛情食」につながりますし、子どもに人生への自信という宝物を与えそこないます。そうそう、こんな調査がありました。アメリカのテネシー州立大学の社会学の教授が300人の学生にインタビューをしました。その結果、いま自信をもって人生に向かっている学生の80%は、子どものころ家庭で談笑しながら食事をしていました。逆に無気力な学生はわずか36%しかその体験がなかった……。さらに「無重量食」というのは、容器の軽さのことです。コンビニやスーパーの容器はプラスチックや紙容器が主体になっています。前出の拙著では、これらの問題を環境ホルモンの視点とゴミの視点から述べてみました。コンビニ食を食べれば食べるほど、私たちや子孫の命も“軽くなる”んですね。

 4 キレる子どもと切っても切れない食生活

 そして最後の「無感動食」。これはコンビニ食に含まれる特に5つの物質が、子どもたちの脳を狂わせているという衝撃的な問題を商品名を挙げて述べたものです。

 冒頭に述べた、女性園長さんの言葉の中のある“物質”とは、まさにその一つ。とりわけ合成着色物質である黄色4号と安息香酸には、すさまじいものがあります。イギリス最大の小児病院では、これらを子どもに与えないよう指導しているほどです。イギリスでも子どものいじめや非行が問題になっているのですが、これらを避けると目に見えてよくなってくることがわかってきました。

 合成着色物質は、アニリンという有機溶剤を介して作られるのですが、実は、髪を染める染毛剤にもアニリンの誘導体が使われています。これは脳の中枢神経を侵し、小脳の中の前庭小脳に蓄積されます。イライラし、キレることの要因にもなってゆくことでしょう。

 先ほど述べた黄色4号や5号などのタール色素といわれる物は、体に入ると有害なメチルニトロソ尿素という物質を生みます。これがおでこの裏側にある前頭葉を侵して、人間を人間でなくするという具合です。脳に有害物質を流入させないために、本来は血液の途中に脳血液中関門という「関所」があるのですが、この物質は、いとも簡単にここをすり抜けてゆくことがわかりました。

 しかもこの関所。3歳児までは完成していません。そのため、有害物質を食べた影響は、小さいときほど深刻です。

 これでは子どもたちは自然に(!)暴れますよね。なぜなら人間の心をなくするわけですから。どれだけ教師や親たちが叫んでも、これらの食べ物を避けない限り、対症療法に終わると思います。

 とくにこの黄色4号は、体に入るとなんと1時間ほどでアレルギーを起こす物質であることが、京都大学の末次さんの実験でわかりました。このような事実を商品名を入れて、楽しく(?)述べてみましたので、関心のある方は一度、書店でごらんください。

 5 「食育」は、大人が包丁を持てば成功する!

 今の食事情を見ていて、何が一番問題かといえば、老若男女、日本中の多くの国民が、包丁を握らなくなったことだと私は思っています。ファストフードや外食、コンビニ食などの蔓延は、自分の手で、自分の命を守る料理を作らなくなったという結果を生みました。

 包丁を持てば、他者の命を殺さななくてはなりません。そのとき命が見えます。他者の命を与えられて自分が生きているんだという真実が見えます。優しさも生まれます。本物の食べ物が何なのかも、自ずとわかることになるでしょう。

 そういう意味で、「食育」に関心が向いてきたことは良い傾向だと思います。しかし、子どもが不登校だから、非行だから、ひきこもりだから、アトピーだから、勉強をしないから、さあ食育、ではないのです。

 大人が毎日包丁を握り(男もですよ!)、真剣に食を見つめてさえいれば、子どもはその大人の背中を見て、自然と食に目覚めることでしょう。それが本当の食育なのです。

 教師自身が1日に1度も包丁を持たず、職員室で店屋物やカップメン、コンビニ弁当を頬張っていながら、「さあ、食育だぞ」なんて言っても説得力がありません。子どもはよく見ているものです。いい機会です。どうか食育を、長い人生の新たなスタートにしてください。

 あなたが包丁を持つことで、「食育」は成功します。なに、料理なんて簡単です。外食のメニューは誰かが利益を生むために発明したもの。あのまねをしてはいけません。料理はシンプルでかまいません。食べるものは本来、シンプルにできているものなのです。

(山田博士いのち研究所主宰)

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