現代人の食生活に警告!
コンビニ食で豚が死産!?
02年、福岡県内のある養豚場で、妊娠した25頭の母豚に異変が起きた。
「出産した子豚の大半が死産。無事生まれたかと思うと、奇形であったり……。通常、白透明の羊水は、チョコレート色に濁っていました。このようなことは、養豚業を35年間続けてきて初めてのこと」(養豚場主)
第一報は西日本新聞「食くらし」取材班により報じられた。記事によると、養豚場主は豚のエサ代を浮かせるため、回収業者から賞味期限の切れたコンビニの弁当やおにぎりを調達。それを毎日3キロ約100日間、妊娠中の母豚に与え続けた結果、日増しに太り始めたという。そこで、農場主はすぐに量を減らしたが、結局、約250頭の子豚に不幸が襲った。
同紙では、こうした“食”に関するニュースをシリーズ連載。読者からの反響も多く、連載記事をまとめたブックレット『食卓の向こう側』は、これまでに5冊刊行されている。
「現代の“食”が、私たち社会の何を映し、何を問いかけているのか。その背後にあるものを見つめることが、テーマのひとつです」(同取材班)
この豚を襲った惨事だが、いまだ、原因は判明しない。しかし、コンビニ弁当を食べ続けた母豚の身に起こった事件であることは、紛れもない事実である(コンビニ名は不明)。『脱コンビニ食!』(平凡社新書)などを著書に持つ食生態学者の山田博士氏は、今回の事件について次のような見解を示す。
「人間と比べて、一生のサイクルが短い豚に、早くから顕著な影響が出たと考えることが出来ます。これは、決して豚に限ったことではありません」
厚生労働省の発表によると、04年の死産件数は3万4000件にも上る。医療技術の飛躍的な進歩にもかかわらず、過去10年の新生児の死亡率は、ほぼ横ばいのまま。「流産については、統計資料はありませんが、推計年間30〜40万人ほど。未熟児や先天性異常の赤ん坊も増えています。また、最も健康であるはずの若者にも異変が起こっています。青年海外協力隊に入隊を希望する若者の実に“4割”近くが、健康診断で失格となっているのをご存じでしょうか? この原因として考えられるのが、現代の食生活なのです」(山田氏)
忙しい現代人は、コンビニの弁当やおにぎり、デパ地下の総菜といった、調理済み・加工食品−コンビニ食品−に頼りがちである。しかし、山田氏は前記した食品に含まれている可能性が高い5つの成分の危険性を説く。その5つとは、【1】合成着色料(タール色素)、【2】安息香酸、【3】亜硝酸塩、【4】BHA(酸化防止物質)、【5】MSG(化学調味料)である。
「【1】で特に気をつけたいのが『黄色4号』と呼ばれる色素。これは、お菓子や飴、漬物などに使用され、ぜんそくや目鼻のアレルギーを引き起こす場合があります。【2】は、毒性の高い保存物質であり、加工食品や清涼飲料水、ドリンク剤に使われ、突然変異を起こす変異原性が指摘されています。ハムやソーセージの発色に使われる【3】は、アレルギーの原因であり、タンパク質の成分であるアミン類と一緒になると強い発がん性を誘発。コンビニ食の調理用油に広く使われるパーム油の酸化防止のために添加される【4】は、発がん性を懸念した厚生省(当時)が、80年代に全面禁止を検討したもの。コンビニ食の味付けにかかせない【5】は核酸性の場合、痛風になる可能性を高め、成長ホルモンや生殖機能への影響も疑われています」(山田氏)
一方、最近の大手コンビニでは、食品添加物、原材料、包材において独自の品質管理基準を設け、安全性を宣言しているところも多い。コンビニ、食品メーカー各社は、食の安全性に向けて品質管理を積極的に進めているのもまた事実である。
「最近、若者の間で潰瘍性大腸炎やクローン病などが多くみられるようになりましたが、それは食生活の欧米化やコンビニ中心の偏った食生活が原因ではないかといわれています。ですが、コンビニ食だけが危ないと言い切ってしまうこともできません。死産や奇形について言うなら、サプリメント(ビタミンA)の過剰摂取を危険視する声もあります。養豚でも育成を早めるために、ビタミン剤やアミノ酸を与えることがあるそうです」と山口大学医学部付属病院・管理栄養士の田坂克子氏は指摘する。そこで、前出のビタミン使用の有無を確かめたが、「通常は使用するが、妊娠期間中は、コンビニ弁当しか与えていない」とのこと。
「コンビニ弁当を与えれば1カ月20万円ほどのエサ代が浮き、その分は自分の酒代に……なんて考えていたら、結局は総額300万円ほどの被害を被ることに。変な欲は出したらいかんということですね」(畜場主)
本来のエサに戻した現在、畜場では月に200頭もの元気な子豚がうまれているという。豚児では済まされない豚を襲った災難であった。(大崎量平)
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